よくあるご質問

日本の不動産 — 個人名義と法人名義のどちらで持つか

この問いに一般解はありません。ネット上では税率の比較で「何円以上なら法人」という形の答えが多く流通していますが、その比較が成立するのは前提が揃っている場合だけです。実務で結論を動かすのは、税率よりも出口と受け手です。

結局、個人と法人のどちらが有利ですか

保有期間・出口・相続の受け手・居住国・融資という5つの軸が揃わないと決まりません。税率の比較だけでは決められない、というのが実務上の答えです。

判断軸効いてくる論点
保有期間短期で回すのか、世代をまたいで持つのか。法人の維持コストは持つほど効いてくる
出口売却するのか、持ち続けて収益を取るのか、次世代に渡すのか。出口が違えば正解が変わる
相続の受け手受け手が日本居住者か非居住者か。非居住者なら不動産そのものより持分の形が効く
居住国本人が日本居住者か否か。課税範囲と申告義務が変わる
融資個人の属性で借りるのか、法人で借りるのか。調達条件が構造を規定することがある

「何円以上なら法人」という言い方は、出口が売却で、受け手が日本居住者で、融資が付く前提のときにだけ意味を持ちます。前提が一つ外れると結論が変わります。

法人名義にするとどういう負担が増えますか

保有しているだけで毎期発生する、継続的な管理コストが増えます。取得時の比較には出てこない部分です。

  • 毎期の決算・申告と、それに伴う実務負担
  • 所得がなくても発生する法人住民税の均等割
  • 登記事項の変更が生じるたびの手続
  • 法人から個人へ資金を戻す局面での課税(配当・役員報酬など、戻し方ごとに扱いが違う)

最後の点が見落とされがちです。法人で持つと、その資産は法人のものになります。個人で使いたくなったときに、そのまま引き出せるわけではありません。

相続を考えるとどちらが扱いやすいですか

受け手が複数いる場合、不動産そのものより持分に変えたほうが分けやすくなります。ただし「分けやすい」と「揉めない」は別です。

不動産を共有名義で相続すると、売却などの変更・処分には原則として共有者全員の同意が要ります(民法251条)。賃貸を含む管理行為は原則として持分価格の過半数で決しますが(民法252条)、長期の賃貸借や建替えは態様によって変更・処分の側に寄り、要件が変わります。いずれにせよ次の世代でさらに細分化します。法人を経由すれば持分の形になり分割はしやすくなりますが、今度は議決権が割れて経営判断が止まるという別の問題が出ます。どちらにするかではなく、議決権と経済的持分を分けて設計できるかが論点です。

参考: 民法 第251条・第252条(e-Gov 法令検索)

非居住者が日本の不動産を持つ場合、注意点は

納税管理人の要否、源泉徴収の扱い、そして相続が起きたときにどの国の法律で分割が決まるかが、居住者の場合と変わります。

特に最後の点は見落とされます。日本の不動産であっても、分割の準拠法は被相続人の国籍から出発して決まり、反致によって日本法に戻ることがあります。課税の話と準拠法の話は別の軸なので、両方を同時に見ないと設計になりません。詳しくは別ページに整理しています。

具体的に何円くらいから法人が有利になりますか

その数字は出しません。個別事情で動く上に、税額の試算は税理士法第2条の業務にあたります。

本ページでお示しできるのは、一般的な判断軸の説明までです。個別の事実関係のもとでの税務上の結論・課税範囲・申告義務、およびそれを前提とした構造の選択は、提携税理士が有資格者として確認・対応いたします。数字だけ欲しい場合は、はじめから税理士にご相談いただくほうが早いと思います。

このページでお答えしていないこと

税額の試算、損益分岐点の算定、申告書の作成は行いません。税理士法第2条の業務にあたり、提携税理士が担当します。不動産の売買仲介、登記手続、賃貸管理も行いません。当社が扱うのは、保有主体をどう置き、議決権と経済的持分をどう分け、出口と相続をどうつなぐかという構造の設計です。

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