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「経営・管理」在留資格の基準を条文で読む — 令和七年十月十六日施行の新基準

2026-08-14

「会社を一つ設立し、一定額の資本金を用意すれば在留資格が取れる」— 日本での事業と在留を同時に検討される方から、私たちはこの前提に立つご相談を繰り返し受けてきました。改正前の水準を前提とした説明も、いまなお流通しています。しかし現行の基準は、会社という器ではなく事業の実体に向けられています。本稿は、在留資格『経営・管理』の基準について、条文が実際に何を求めているかを一般的な制度情報として整理するものです。

制度上の位置 — 「上陸のための条件」の一部

出入国管理及び難民認定法(以下「法」)第7条第1項第2号は、上陸のための条件として、申請に係る活動が別表第一の下欄に掲げる活動に該当することに加え、別表第一の二の表及び四の表の活動については「法務省令で定める基準に適合すること」を求めています。この基準を定めるのが「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」(以下「上陸基準省令」)です。

経営・管理は法別表第一の二の表に置かれた在留資格であり、その活動は「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」と定められています。ただし同項下欄は、法別表第一の二の表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を、この活動から除いています。改正後の基準は、上陸基準省令附則第一条により令和七年(2025年)十月十六日から施行されています。

基準は六つの要素で構成されている

上陸基準省令の経営・管理の項は、「申請人が次のいずれにも該当していること」として以下を列挙します。原則としていずれも申請人について問われる要件であり、条文が他の者による充足を明示的に認めているのは、日本語能力の要件だけです。

要素条文が求める内容
事業所事業を営むための事業所が本邦に存在すること(事業が開始されていない場合は、事業所として使用する施設が本邦に確保されていること)
常勤職員経営又は管理に従事する者以外に、本邦に居住する常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く)が従事して営まれるものであること
財産の総額事業の用に供される財産の総額(資本金の額及び出資の総額を含む)が三千万円以上であること
日本語能力事業の経営を行い、又は当該事業に従事する者(非常勤の者を除く)のうちいずれかの者が、高度に自立して日本語を理解し、使用することができる水準以上の能力を有し、かつ本邦に居住することとしているものであること
経歴申請人が、経営管理に関する分野又は申請に係る事業の業務に必要な技術若しくは知識に係る分野の博士・修士・専門職学位を有すること、又は事業の経営若しくは管理について三年以上の経験を有すること
報酬申請人が事業の管理に従事しようとする場合は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること

(いずれも上陸基準省令の表・法別表第一の二の表の経営・管理の項に掲げる活動の項)

見落とされやすい三点

「資本金三千万円」ではありません。 条文が求めているのは「事業の用に供される財産の総額(資本金の額及び出資の総額を含む。)」が三千万円以上であることです。資本金はそこに算入される一要素であり、基準が向けられているのは事業に投下される財産の総額です。

日本語の要件は、必ずしも申請人本人に課されるものではありません。 条文は、経営を行う者又は当該事業に従事する者(非常勤の者を除く)のうち「いずれかの者」が水準を満たすことを求めています。ただし、その者が本邦に居住することとしているものであることが併せて要件とされています。なお、この「いずれかの者」という書き方は日本語能力の要件に固有のものです。学位又は三年以上の経験という経歴の要件は申請人自身について問われるものであり、従業員その他の者によって代替することはできません。

常勤職員に算入される人の範囲は限定されています。 条文は「本邦に居住する常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)」と定めます。法第2条の2第2項は「在留資格は、別表第一の上欄……又は別表第二の上欄に掲げるとおり」と規定しており、上欄とは在留資格の欄を指します。別表第一の上欄には、高度専門職・経営・管理・技術・人文知識・国際業務・特定技能・留学・家族滞在などが掲げられています。したがって、これらの在留資格をもって在留する方は、この常勤職員には算入されません。他方、別表第二の上欄に掲げられているのは、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者です。人員計画は、この区分を前提に立てる必要があります。

提出資料が示す「確認のかたち」

法施行規則別表第三の経営・管理の項は、提出資料として「経営に関する専門的な知識を有する者による評価を受けた事業計画書の写し」を掲げています。加えて、申請人を除く常勤職員の総数を明らかにする資料、当該職員に係る賃金支払に関する文書及び住民票・在留カード又は特別永住者証明書の写し、事業の用に供される財産の総額を明らかにする資料、事業所の概要、学位又は職歴を証する文書、日本語能力及び本邦居住を明らかにする資料が挙げられています。事業計画・雇用・財産・言語のそれぞれについて、書面による裏づけが前提とされている構造です。

経過措置と更新は、別の条文で動く

上陸基準省令の附則が定める経過措置は二つです。施行日前にされた上陸の申請及び在留資格認定証明書の交付申請についての処分は、なお従前の例によること(附則第二条)。そして、施行日前に交付を受けた在留資格認定証明書に基づき施行日以後にされた上陸の申請に対する処分については、施行日又は交付の日から起算して三月を経過する日までの間は、なお従前の例によること(附則第三条)です。

他方、すでに在留されている方の在留期間の更新は、法第21条第3項により「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」に限り許可される仕組みであり、上陸のための条件とは別の条文に基づく判断です。更新の取扱いについては、公表されている運用を個別に確認する必要があります。

会社の設計と在留資格の設計は、同じ時点で決まる

私たちの経験では、後から修正が難しくなるのは在留資格そのものではなく、その前提として作られた会社の構造です。財産の総額を誰の資金で満たすのか(本人か、既存の海外法人か、家族か)という選択は、その後の配当・譲渡・承継の経路をあらかじめ決めてしまいます。常勤職員の雇用も、給与等の支払に伴う源泉徴収(所得税法第183条第1項)や、法人の事業所として常時従業員を使用する場合の厚生年金保険の適用(厚生年金保険法第6条第1項第2号)といった、継続的な義務を伴います。

確認すべきは次の三点です。

  • 財産の総額を、誰の資金で、どの持分構成で満たすのか
  • 常勤職員として算入できる人材を、実際に確保できるのか
  • 日本語能力の要件を、申請人本人と職員のどちらで満たす設計にするのか

在留資格の要件と、会社の資本構成・雇用計画を一枚の構造図に起こすこと。これが、日本で事業と在留を同時に設計する際の出発点です。


本稿は一般的な制度情報の提供を目的とするものであり、個別の税務相談又は申請手続の代行に該当するものではありません。具体的な申告・税額計算については、提携税理士をご紹介の上、有資格者が対応いたします。在留資格の申請手続については、有資格の専門家をご紹介いたします。

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