SEISEI INSIGHTS — 国際税務コンプライアンス

「経営・管理」在留資格とペーパーカンパニーの構造的リスク — なぜ「実体のない会社」は続かないのか

2026-07-17

「日本で会社を設立すれば在留資格が取れる。資本金を用意し、毎年少し納税すれば、更新も問題ない」— 在留資格『経営・管理』を検討される方から、私たちはこうした説明を耳にすることが少なくありません。しかし税務と在留管理の構造から見ると、この理解には見落とされがちな前提があります。会社という「器」があることと、事業の「実体」があることは、まったく別の問題です。

更新のたびに問われるのは「実体」

在留資格『経営・管理』は、設立時点の資本金だけで完結する制度ではありません。更新の審査では、売上・利益・従業員・取引先といった、事業が現に動いていることを示す事実が問われます。近年、この基準は厳格化の方向にあり、事業の実在性はより丁寧に確認されるようになっています。

実体のない会社を維持しようとすると、ここで無理が生じます。名義だけの従業員、実態を伴わない契約、売上の仮装 — こうした対応は、在留管理上の「虚偽申請」に直結します。

虚偽申請が招く三つの帰結

偽りその他不正の手段により許可を受ける行為には、法律上、重い帰結が定められています。

局面根拠内容
刑事罰出入国管理及び難民認定法 第70条偽りその他不正の手段により上陸・在留に係る許可を受けた場合、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(併科あり)
退去強制同法 第24条一定の事由に該当する外国人は、本邦からの退去を強制され得る
再入国の制限同法 第5条第1項第9号退去を強制された者は、原則として退去の日から5年間、本邦への上陸を拒否される

失うのは在留資格だけではありません。子どもの就学先、住まい、日本で築いた生活基盤 — その全体が一度に揺らぐことになります。

税理士は「偽りの計画書」に署名しない

事業計画の作成において有資格者の関与が求められる場面が増えていますが、税理士は虚偽の記載に加担することができません。税理士が故意に真正の事実に反して税務書類を作成した場合や、法令に定める添付書面に虚偽の記載をした場合には、業務の停止・禁止を含む懲戒処分が定められています(税理士法第45条・第46条)。専門家の署名は、実体があってはじめて機能するものです。

「器」ではなく「実体」から設計する

私たちが構造の観点から整理してお伝えしているのは、次の一点に尽きます。実体のある事業 — 現に売上と利益を生み、従業員と取引先を持つ会社 — であれば、更新審査で示すべき事実はそのまま揃っています。既存の中小企業を承継するという選択肢も、この「実体」を出発点に据える一つの考え方です。加えて、経営革新計画の承認(中小企業等経営強化法第14条)や、高度な専門人材を対象としたポイント制など、実体のある事業を前提とした制度も用意されています。

出発点は「どうやって審査を通すか」ではなく、「どのような実体をつくるか」です。器を先に用意して実体を後から取り繕う設計は、更新の回数を重ねるほど破綻に近づきます。制度に年度単位の期限が伴う場合もあるため、こうした構造は一時の締切に追われるのではなく、年度内に計画として組み立てておくことが望まれます。


本稿は一般的な税制・制度情報の提供を目的とするものであり、個別の税務・在留手続の相談に該当するものではありません。具体的な申告・申請については、提携する有資格の専門家をご紹介の上、対応いたします。

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