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日本の相続税、はじめの一歩 — 3億円の遺産は、いくら子に遺せるのか

2026-07-22

「日本で築いた資産を、子どもたちにいくら遺せるのか」— 在日の資産家の方から、私たちはこの問いを繰り返し受けてきました。日本の相続税は最高税率55%、一方で母国(中国)には相続税そのものがありません。この差を前に、何をどう考えればよいのか。本稿では、仮に3億円の遺産があるとして、その税額がどのように決まるのかを、制度の順序に沿って整理します。

相続税は三つの段階で決まる

相続税の計算は、大きく三つの段階に分かれます。

第一段階:基礎控除を差し引く。 相続税法第十五条は、基礎控除額を「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」と定めています。配偶者と子ども二人であれば法定相続人は三人、基礎控除は 3,000万円+600万円×3=4,800万円 です。遺産総額がこの額以下であれば、相続税はかかりません。

第二段階:課税遺産総額を法定相続分で按分する。 3億円から基礎控除4,800万円を引いた 2億5,200万円が課税対象です。これを法定相続分で分けると、配偶者1/2=1億2,600万円、子はそれぞれ1/4=6,300万円となります。

第三段階:税率表を当てはめる。 相続税法第十六条は、下表の累進税率を定めています(控除額は同条の税率構造から導かれる速算控除です)。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

配偶者の1億2,600万円は税率40%・控除1,700万円で 3,340万円、子はそれぞれ6,300万円が税率30%・控除700万円で 1,190万円。合計した相続税の総額は5,720万円です。この総額を、実際の取得割合に応じて各人が負担します。

配偶者の税額軽減 — 負担は消えず、繰り延べられる

相続税法第十九条の二は、配偶者について大きな軽減を設けています。配偶者が取得した財産が「1億6,000万円」か「法定相続分」のいずれか多い額までであれば、配偶者の相続税は生じません。先の例で配偶者分の3,340万円がゼロになれば、実質負担は 2,380万円 まで下がります。

ただし、ここには構造上の落とし穴があります。配偶者がいったん多くを相続して税を抑えても、その配偶者が亡くなったとき(二次相続)に、同じ資産が改めて相続税の対象になります。負担は消えたのではなく、次の世代への相続まで繰り延べられただけです。一次相続だけを見て最適化すると、二次相続で想定外の税負担が生じることがあります。

もう一つの論点 — 全世界の財産

日本に住所を有する被相続人・相続人については、原則として国外にある財産も相続税の課税対象となり得ます。母国に残した不動産・預金・株式も、日本の相続税の枠内で検討する必要があります。「母国の資産は日本と関係ない」という前提は、多くの場合当てはまりません。

構造の問題として捉える

相続税は、一度きりの計算ではなく、居住形態・財産の所在・相続の順序が絡み合う構造の問題です。まず確認すべきは、法定相続人の数と基礎控除、配偶者の税額軽減を使ったときの一次・二次相続の合計負担、そして国外財産の有無です。制度上、負担を軽減する複数の仕組みが用意されていますが、その適用可否は個別の事実関係によって変わります。


本稿は一般的な税制情報の提供を目的とするものであり、個別の税務相談に該当するものではありません。具体的な申告・税額計算については、提携税理士をご紹介の上、有資格者が対応いたします。

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