SEISEI INSIGHTS — 国際税務コンプライアンス

高度専門職ポイント制の構造 — 「会社を経営する人」の配点は、研究者・技術者とは違う

2026-07-16

「修士号があって、実務が10年あって、年収1,000万円なら、80点は堅い」— 日本での会社取得やビザ設計を検討される方から、私たちはこの種の見立てを繰り返し聞いてきました。数字そのものは、どこかで見た本物のポイント表から来ています。ただし、多くの場合、それは別のルートの表です。

高度専門職のポイント制は、一つの表ではありません。出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表「高度専門職」の項に対応する基準省令は、活動の性質によって配点の異なる三つのルートを定めています。研究者向けの「高度学術研究活動」(第1号イ)、技術者・専門職向けの「高度専門・技術活動」(第1号ロ)、そして会社を経営・管理する人向けの「高度経営・管理活動」(第1号ハ)です。会社を取得してその経営に当たる方に適用されるのは、原則として三つ目のルートです。

同じ「年収1,000万円」でも、点数は40点にも10点にもなる

ここが最も誤解の多い点です。年収1,000万円は、研究・技術ルート(イ・ロ)では40点ですが、経営・管理ルート(ハ)では10点にとどまります。経営・管理ルートの年収配点は、より高い水準を前提に組まれているためです(3,000万円以上で50点、1,000万円以上1,500万円未満で10点)。

年齢についても違いがあります。研究・技術ルートには年齢による加点(30歳未満で15点など)がありますが、経営・管理ルートに年齢の項目はありません。代わりに「地位」の項目があり、代表取締役等であれば10点、取締役等であれば5点が付きます。「若さ」ではなく「経営上の役割」で評価される、という設計です。

経営・管理ルート(第1号ハ)の主な配点

会社を取得・経営する方に適用される配点は、おおむね次のとおりです(基準省令に基づく主要項目の抜粋)。

項目基準点数
学歴経営管理に関する専門職学位(MBA等)25
学歴博士・修士・専門職学位20
学歴大学卒業(学士)10
職歴事業の経営・管理の実務経験10年以上25
職歴同 7年以上10年未満20
職歴同 5年以上7年未満15
年収3,000万円以上50
年収2,000万円以上2,500万円未満30
年収1,000万円以上1,500万円未満10
地位代表取締役・代表執行役等10
地位取締役・執行役等5
特別加算中小企業者であり、かつイノベーション創出の促進に資する一定の認定等を受けている20
特別加算日本語能力(N1相当)15
特別加算日本語能力(N2相当)10

合計が70点以上であれば、高度専門職として認められます。

会社取得というルートが「効く」理由は、年収ではない

たとえば、修士号を持ち、経営・管理の実務が10年あり、取得した会社の代表取締役に就き、年収1,200万円を受け、その会社が中小企業として一定のイノベーション関連の認定等を受けており、日本語がN2相当という方を考えます。

配点は、学歴(修士)20+職歴(10年以上)25+年収(1,000万円台)10+地位(代表取締役)10+特別加算(中小企業+認定)20+日本語N2相当10=95点。70点を大きく超えます。

注目すべきは、この95点のうち年収が寄与しているのは10点にすぎない、という点です。効いているのは職歴・地位・特別加算です。「年収1,000万円で40点稼げる」という前提でルート全体を組むと、経営・管理ルートでは計算が合いません。会社取得が身分設計として機能するのは、年収そのものよりも、経営上の役割と対象企業の属性(中小企業性・認定の有無)が加点につながるからです。

なお、一定の点数を継続して満たす場合に、永住許可の在留期間要件が大幅に短縮される運用がとられています。ただし短縮の具体的な年数は法律ではなく入管の運用(永住許可に関するガイドライン)に基づくものであり、要件は改定され得ます。本稿では特定の年数を断定しません。

構造の問題として捉える

ポイント制は「天才向けの試験」ではなく、要件を項目ごとに積み上げる制度です。だからこそ、最初に確認すべきは「自分がどのルートに乗るか」です。研究者・技術者として申請するのか、会社を経営・管理する立場で申請するのか。ルートを取り違えたまま点数を数えると、実際の審査で数十点ずれることがあります。確認すべきは次の三点です。

  • 自分はどのルート(研究/技術/経営・管理)に該当するか — 配点表そのものが変わります
  • 年収以外にどの項目で点が積めるか — 職歴・地位・特別加算の設計が鍵になります
  • 対象企業は加点要件(中小企業性・認定等)を満たすか — 20点規模の差になり得ます

ルートの選定と加点項目の棚卸しを一枚の構造図に起こすことが、高度専門職を検討される方の出発点です。


本稿は在留資格制度に関する一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別の申請相談に該当するものではありません。具体的な在留資格申請の可否・手続については、提携の有資格者(行政書士等)をご紹介の上、有資格者が対応いたします。

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