SEISEI INSIGHTS — M&A

日本のM&Aアドバイザーを見極める — 「登録制度」から始める確認手順

2026-07-20

海外から日本企業の買収を検討される方から、私たちは同じ問いを繰り返し受けます。「相手が本物のアドバイザーなのか、それとも仲介を装った業者なのか、どう見分ければよいのか」。この問いが絶えないのは、市場に一定のリスクが存在するからです。着手金を受け取ったまま連絡が途絶える、実体の乏しい案件で意思決定を急がせる、在留資格の取得まで安易に「保証」する — こうした事例は現実に報告されています。本稿では、個別の業者評価ではなく、誰でも同じ基準で確認できる制度上の出発点を整理します。

出発点は「M&A支援機関登録制度」

最も客観的な確認手段は、相手が M&A支援機関登録制度 に登録されているかを調べることです。これは中小企業庁が運営する公的な登録制度で、登録された仲介業者・フィナンシャルアドバイザー(FA)の一覧はオンラインで公開されており、誰でも照会できます。

登録には二つの実務的な意味があります。

  • 行動規範の遵守宣言 — 登録にあたり、事業者は「中小M&Aガイドライン」(経済産業省・中小企業庁)の遵守を宣言します。手数料の透明化や、買い手・売り手双方から報酬を受け取る場合の開示などが求められます。
  • 補助金の対象要件 — 「事業承継・M&A補助金」の専門家活用に係る枠では、登録された支援機関による支援であることが、手数料の一部補助を受ける前提となります。

もっとも、登録が示すのは、公募要領が定める登録要件を満たしたという事実です。要件は、ガイドラインの遵守宣言とその自社サイトへの掲載、手数料体系と支援業務の報告および報告内容の一部を公表することへの同意、反社会的勢力に該当しないことなど、複数にわたります。登録は許認可でも優良認定でもなく、支援の品質を保証するものではありません。逆に、非掲載であること自体から不適格と判断することもできません。登録の対象となる業務の範囲は制度上限定されており、対象外の業務のみを担う専門家は掲載されないためです。

危険信号 — 四つの確認点

兆候なぜ問題か
「保証」を多用する成約・在留資格・許認可の取得を確実に約束することは、本来できません。断言する相手は、理解が浅いか、判断を急がせようとしています
過程を見せない正規のアドバイザーは、対象企業の選定基準やデューデリジェンスで判明した論点を開示します。「機会を逃す前に着手金を」とだけ促すのは兆候です
資格・実体が確認できない事務所の登録、所在、担当者の資格が確認できるかは基本的な確認事項です
双方報酬を開示しない買い手・売り手の双方から報酬を受け取る構造(両手)を開示しないアドバイザーは、立場が中立でない可能性があります

資格の線引き

日本では、専門領域ごとに資格の範囲が法律で画されています。税務書類の作成や申告の代理といった事務は、他人の求めに応じて業として行う場合に「税理士業務」に当たり、税理士又は税理士法人でなければ行えません(税理士法第2条第1項・第2項、第52条)。ただし法律に別段の定めがある場合は例外で、所属弁護士会を経て国税局長に通知した弁護士は、その国税局の管轄区域内で税理士業務を行えます。弁護士法人と弁護士・外国法事務弁護士共同法人も、社員である弁護士の全員がこの通知をしている法人に限り、所属弁護士会を経て国税局長に通知することにより、同じ区域内で税理士業務を行えます(同法第51条第1項・第3項)。不動産については、宅地・建物の売買・交換を自ら行うこと、またはその売買・交換・貸借の代理・媒介をすることを、業として行う場合に免許が必要です。免許を受けない者は、宅地建物取引業を営むことも、営む旨を表示・広告することもできません(宅地建物取引業法第2条第2号・第3条第1項・第12条)。不動産を保有する会社の株式譲渡を助言・仲介するだけなら、通常これには当たりません。アドバイザーがどの業務を自ら担い、どの領域を有資格者に委ねるのかを明確に説明できるかは、体制の健全性を示す一つの指標です。

構造の問題として捉える

「この相手は詐欺か否か」という問いは、実は検証しにくい問いです。より確認しやすいのは、次の三点です。

  • 登録制度の公開リストに載っているか
  • 対象企業の選定過程とデューデリジェンスの所見を開示するか
  • 各業務を、その資格を持つ者が担う体制になっているか

過程を見せられる相手か、着手金だけを急がせる相手か — この一点が、制度と実務の両面から見た最初のふるいになります。


本稿は一般的な制度情報の提供を目的とするものであり、個別の法務・税務相談に該当するものではありません。具体的な案件の検討にあたっては、提携する有資格の専門家をご紹介の上、対応いたします。

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