永住権の取消事由

概要

永住権の取消事由とは、日本に永住する資格(永住許可)が取り消される法的根拠となる条件や行為を指します。永住許可は「永住者」の在留資格を付与するものであり、一度取得すれば原則無期限に在留できますが、一定の重大な事由が発生した場合、法務大臣により取消される可能性があります。これは、永住者が日本社会に適切に定着し、法令を遵守していることを前提とした制度であるため、その前提が崩れた場合の是正措置として設けられています。

適用対象・シナリオ

この制度は、既に「永住者」の在留資格を有するすべての外国人(特別永住者を除く)に適用されます。具体的には、以下のようなシナリオで永住権の取消手続きが検討される可能性があります。

  • 虚偽の申請や不正な手段で永住許可を得たことが後から判明した場合。
  • 永住許可後に、日本での生活の根拠(生計を立てる資産や技能)を失い、公共の負担となる状態が続いている場合。
  • 法令違反を繰り返し、日本における住居及び行動の管理に係る義務を怠っていると認められる場合。
  • 国外退去強制事由(入管法第24条)に該当する行為を行った場合(ただし、永住者に対する取消は、その行為が特に法秩序に反するなど、より慎重に判断されます)。

核心的な結論

  • 永住権は「取り消される可能性がある資格」であり、絶対的なものではありません。
  • 取消は、虚偽申請、生活基盤の喪失による公的負担、重大・反復する法令違反など、限定的かつ重大な事由に基づいて行われます。
  • 取消手続きが開始される前に、原則として本人に対して弁明の機会が与えられます。
  • 取消処分に不服がある場合は、異議申立てや取消訴訟を提起する法的救済途があります。

手続き・操作手順

永住権の取消は、在留資格を付与した法務大臣が職権で行う行政処分です。対象者自身が申請する手続きではありません。

ステップ1: 調査・事実確認 出入国在留管理庁が、虚偽申告の情報や犯罪歴の報告などに基づき、永住者に取消事由が存在するかどうかを調査します。

ステップ2: 弁明の機会の付与 取消が検討される場合、法務大臣は当該永住者に対し、取消事由とされる事実を通知し、書面または口頭で弁明(意見や反論を述べる機会)をさせることになります(入管法第22条の4第2項)。

ステップ3: 審査・決定 提出された弁明書や聴取結果を考慮し、法務大臣が永住許可を取り消すかどうかを決定します。取消しを行う場合は、取消理由を記載した書面(取消通知書)が本人に交付されます。

ステップ4: 在留資格の失効と退去強制手続き 永住許可の取消しが確定すると、「永住者」の在留資格は失効します。これにより、その方は在留資格を持たない状態となるため、新たな在留資格を得るための申請を行わない限り、原則として出国するか、退去強制手続きの対象となります。

よくある質問(FAQ)

Q1: 交通違反(スピード違反等)を一度しただけで永住権は取り消されますか? A1: 一般的に、軽微な交通違反1回のみでは永住権取消の対象とはなりません。ただし、反則金や罰金を納付せずに放置するなど、法令遵守の意思に欠けると判断される行為が繰り返された場合は、総合的に判断され、取消事由となる可能性があります。

Q2: 失業して生活保護を受給すると、永住権は取り消されますか? A2: 失業や一時的な生活困窮により生活保護を受給したこと自体が直ちに取消事由となるわけではありません。しかし、「資産又は技能によって生計を営むことができないために生活保護法による保護以外の公的扶助を繰り返し受けることとなった場合」など、永続的に公共の負担となっていると認められる状態が続く場合は、取消の対象となり得ます(入管法第22条の4第1項第2号)。

Q3: 永住権の取消処分に対して異議を唱える方法はありますか? A3: はい、あります。取消通知を受けた日から6か月以内に、法務大臣に対して異議申立てを行うことができます(行政不服審査法)。また、取消処分の取消しを求める訴訟(行政事件訴訟)を裁判所に提起することも可能です。

Q4: 取消事由に該当する行為をした場合、必ず取り消されますか? A4: 必ずしもではありません。取消事由に該当する事実があっても、その程度や情状、本人のこれまでの在留状況、家族関係等の個別事情を総合的に考慮し、法務大臣の裁量によって判断されます。弁明の内容も重要な考慮要素です。

Q5: 特別永住者の永住権も同じ理由で取り消されますか? A5: 特別永住者(主に旧植民地出身者とその子孫)は、「出入国管理及び難民認定法」ではなく「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」の適用を受けます。取消事由は一般の永住者よりもさらに限定的で、国外退去命令事由に該当する場合など、極めて重大な場合に限定されています。

リスクとコンプライアンス

  • 虚偽申告の重大性: 永住許可申請時の虚偽の記載や偽造文書の提出は、許可後であっても発覚次第、取消の強力な事由となります。過去の申請内容の見直しを。
  • 法令遵守の継続: 永住権取得後も、日本の法律(税法、道路交通法、刑法など)を遵守することが極めて重要です。特に罰金刑以上の刑に処せられた場合は、記録に残り、取消審査の対象となります。
  • 生活基盤の維持: 安定した生計を営む能力(資産、技能、安定した収入)を維持することが期待されます。長期にわたる無職状態や、社会保障制度に過度に依存する状態はリスク要因となり得ます。
  • 住居地の届出義務: 永住者を含む中長期在留者は、住居地を定めた日から14日以内に、市町村へ「住居地届出」を行う義務があります。この届出を怠ることも、「住居及び行動の管理に係る義務を怠っている」と判断される可能性があります。

免責事項: 本記事は、出入国在留管理庁の公式発表や関連法令に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別具体的な事例に関する法的助言を行うものではありません。永住権の取消に関する懸念がある場合は、必ず出入国在留管理庁または移民法に詳しい専門家(行政書士、弁護士)に直接ご相談ください。

参考と出典

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