青色申告の承認申請手続き(所得税)

1. 概要

青色申告とは、所得税及び法人税の申告において、一定の帳簿書類を備え付け、それに基づいて所得金額や必要経費を計算し、税務署に申請して承認を受けた個人事業主や法人が利用できる申告制度です。複式簿記に基づく正確な記帳を行うことで、青色申告特別控除(最高65万円または55万円)や純損失の繰越控除・繰戻還付など、白色申告よりも有利な税制上の特典を受けることができます。事業を営む方にとって、節税と経営管理の両面で重要な制度です。

2. 適用対象・シナリオ

青色申告の承認申請は、以下のような方々が対象となります。

  • 新規に個人事業を開業し、青色申告をしたい方
  • 現在白色申告で申告しているが、今後は青色申告に切り替えたい個人事業主
  • 不動産所得や山林所得がある方で、青色申告を適用したい方
  • 青色申告をしていたが、一度やめてしまい、再開したい方

注意点: 給与所得のみの方、公的年金等のみの方は対象外です。また、事業所得等がなく、不動産所得のみの方も、その不動産の規模や管理の態様によっては対象となる場合があります。

3. 核心的な結論

  • 青色申告には、最高65万円(e-Tax等で申告かつ複式簿記等の一定の要件を満たす場合)または55万円の特別控除があり、大幅な節税効果が期待できます。
  • 承認を受けるには、事業開始等の日から2ヶ月以内に所轄税務署へ「青色申告承認申請書」を提出することが原則です(期限後も特例承認を受けられる場合あり)。
  • 承認後は、複式簿記(または簡易簿記)に基づき、日々の取引を正確に記帳し、関連書類を保存する義務が生じます。
  • 青色申告をやめる場合(廃止)も、所定の期限までに「青色申告の取りやめ届出書」を提出する必要があります。

4. 手続き・操作手順

ステップ1: 準備

  1. 帳簿の選択: 青色申告では、原則として複式簿記による記帳が求められます。ただし、所得が300万円以下など一定の条件を満たす場合は、簡易な簿記(簡易簿記)も選択可能です。どちらの方式で記帳するかを決めます。
  2. 必要書類の確認: 主な申請書類は「所得税の青色申告承認申請書」です。この用紙は税務署で入手するか、国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。
  3. 記帳方法の学習: 複式簿記の知識がない場合は、簿記の基本(仕訳、総勘定元帳、貸借対照表、損益計算書の作成)を学ぶ必要があります。税務署や商工会議所等が開催する講習会の利用も有効です。

ステップ2: 申請・提出

  1. 申請書の作成: 「所得税の青色申告承認申請書」に必要事項を記入します。主な記載項目は以下の通りです。
    • 氏名、住所、個人番号(マイナンバー)
    • 開業(事業開始)年月日
    • 事業の種類(業種)
    • 適用開始年月(いつから青色申告を開始したいか)
    • 記帳の方法(複式簿記か簡易簿記か)
    • 事業に専従する親族がいる場合は、その氏名等
  2. 提出期限の確認: 原則として、青色申告を開始しようとする年の3月15日まで、または事業を新規に開始した場合はその事業開始の日から2ヶ月以内に提出しなければなりません。
    • : 2024年1月1日に開業した場合、申請期限は2024年3月15日(暦年基準)または2024年3月1日(2ヶ月ルール)のいずれか早い日となります。
  3. 提出先: 納税地の所轄税務署に提出します。郵送も可能です。e-Taxによる電子申請もできます。

ステップ3: 審査・確認

  1. 税務署による審査: 提出された申請書に不備がなければ、税務署長による承認が行われます。通常、不備がなければ特に通知は来ません。
  2. 承認の確認: 申請後、特に否認の通知が来なければ、申請内容が承認されたものとみなされます。心配な場合は、税務署に問い合わせて確認することができます。
  3. 記帳の開始: 承認を受けたら、決定した記帳方法に従い、日々の取引を漏れなく記帳していきます。領収書や請求書などの証憑書類も整理・保存します。

5. よくある質問(FAQ)

Q1. 申請期限を過ぎてしまいました。もう青色申告はできませんか? A1. 期限後でも、「やむを得ない事情」があると認められれば、特例として承認を受けられる場合があります(期限後特例承認)。具体的な事情については、早めに所轄税務署に相談してください。

Q2. 複式簿記が難しく感じます。簡易簿記でも控除は受けられますか? A2. 簡易簿記(収支内訳書の提出)で承認を受けた場合、受けられる青色申告特別控除は最高10万円となります。65万円または55万円の控除を受けるためには、複式簿記に基づき貸借対照表を確定申告書に添付して提出する必要があります。

Q3. 青色申告をやめたい(廃止したい)ときはどうすればいいですか? A3. 青色申告の適用をやめたい年の3月15日までに、「青色申告の取りやめ届出書」を税務署に提出する必要があります。提出しないまま記帳を怠ると、税務署から青色申告の承認を取り消される場合があります。

Q4. 開業届と青色申告承認申請書は同時に出せますか? A4. はい、可能です。開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)と青色申告承認申請書は別々の書類ですが、同時に提出することが一般的です。

Q5. 青色申告者になると、どんな帳簿をつけなければなりませんか? A5. 複式簿記の場合、主要簿(仕訳帳、総勘定元帳)と必要に応じて補助簿(現金出納帳、売掛帳、買掛帳など)を作成・保存する必要があります。また、取引に応じた請求書、領収書、契約書などの書類(証憑)も7年間保存が義務付けられています。

Q6. 不動産貸付(アパート経営)だけでも青色申告はできますか? A6. はい、可能です。ただし、その不動産の貸付けが「事業的規模」であるかどうかが判断基準となります。5棟10室以上など明確な基準はありませんが、継続性と反復性を持って組織的に行われているかがポイントです。詳しくは税務署にご確認ください。

6. リスクとコンプライアンス

  • 虚偽申請の禁止: 実際には事業を行っていない、または記帳する意思がないのに申請することは禁止されています。
  • 記帳・保存義務: 一度承認を受けると、正規の簿記の原則(複式簿記)に従って誠実に記帳し、帳簿書類を保存する法的義務が生じます。これを怠ると、青色申告の承認を取り消されたり、加算税が課されたりするリスクがあります。
  • 期限厳守: 申請期限は法律で定められています。期限後申請は認められない場合がほとんどですので、余裕を持って手続きを行ってください。
  • 最新情報の確認: 税制は毎年のように改正される可能性があります。具体的な控除額や要件については、必ず最新の公式情報で確認してください。

7. 参考と出典

8. 関連トピック

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