必要書類(法人税申告・確定申告における)
1. 概要
法人税の申告・納付、また税務調査において、法律(法人税法、法人税法施行令、同施行規則等)に基づき作成・保存が義務付けられている書類を「必要書類」といいます。これらの書類は、企業の取引の事実関係や計算過程を証明する根拠として極めて重要です。適切な作成と保存は、正確な申告を実現するだけでなく、税務上のリスクを軽減し、税務調査が円滑に進むための基盤となります。
2. 適用対象・シナリオ
適用対象: 国内に本店または主たる事務所を有する全ての法人(普通法人、公益法人等、人格のない社団等)が対象です。具体的には、株式会社、合同会社、医療法人、学校法人、NPO法人などが含まれます。
必要となる主なシナリオ:
- 確定申告書の作成時: 損益計算書、貸借対照表、勘定科目内訳明細書などの財務諸表や、所得の金額の計算に関する明細書(別表)を作成するための基幹資料として。
- 税務申告書の提出時: 申告内容を裏付ける書類として、税務署から提示を求められる場合があります。
- 税務調査時: 申告内容の適正性を確認するため、税務職員がこれらの書類の提示を求めます。
- 帳簿書類の保存義務: 法人税法及び消費税法において、一定期間(原則7年)の保存が法定されています。
3. 核心的な結論
- 必要書類は、取引の発生から決算、申告に至るまでの一連の流れを、客観的・体系的に証明できるものでなければなりません。
- 作成の真実性と保存の完全性が法律で要求されています。虚偽の記載や書類の隠蔽・改ざんは重大なコンプライアンス違反です。
- 書類は、電子データによる保存も一定の要件を満たせば認められています(e-文書法)。
- 必要な書類の種類や詳細は、法人の規模(資本金の額、所得金額等)や業種によって一部異なります。自社に適用される具体的な要件を確認することが重要です。
4. 手続き・操作手順
ステップ1: 準備(作成・取得)
取引の発生都度、以下の書類を正確に作成、または取引先から確実に受け取ります。
- 主要帳簿: 仕訳帳、総勘定元帳
- 決算関係書類: 損益計算書、貸借対照表、株主資本等変動計算書、個別注記表
- 取引関係書類:
- 請求書、納品書、領収書、見積書、契約書
- 預金通帳、借用証書、小切手手帳の控え
- 有価証券の受渡計算書、貸借対照表の価格の計算に関する明細書
- その他重要な書類:
- 給与所得の源泉徴収票、支払調書(法定調書)
- 固定資産の償却計算書、棚卸表
- 主要な取引先との契約書
ステップ2: 整理・保存
作成・取得した書類を、以下の要件に従って整理・保存します。
- 保存期間: 原則として7年間(欠損金の繰越控除に関する帳簿書類は9年または10年)。詳細な期間区分は公式情報源で確認してください。
- 保存方法:
- 紙での保存: 時系列や取引先別、科目別など、検索可能な状態で整理します。
- 電子データでの保存(スキャナ保存または電磁的記録保存):
- 真実性の確保: 訂正・削除履歴が残る、または防止措置が講じられていること。
- 見読可能性の確保: 画面表示や印刷ができること。
- 検索性: 日付、金額、取引先等で検索できること。
- スキャナ保存には、タイムスタンプの付与等、更なる要件があります。
ステップ3: 提示・提出(税務調査・照会時等)
税務署からの調査や照会があった場合、求められた範囲の帳簿書類を提示または提出します。
- 電子データで保存している場合は、そのデータを提示するか、印刷したものを提示することができます。
- 正当な理由なく提示を拒否したり、偽りの記載をした書類を提示したりすることはできません。
5. よくある質問(FAQ)
Q1. 領収書のない少額の経費(交通費、飲食代など)はどのように処理すればよいですか? A1. 領収書のない経費であっても、必要経費として認められるためには事実を証明できる記録が必要です。出張旅費報告書(日時、目的地、目的、金額を記載)、クレジットカードの利用明細、電子マネーの利用履歴、または会社が定めた規程に基づく精算書などを併用して、取引の事実を記録・保存することが望ましいです。
Q2. スマートフォンで撮影した領収書の画像は、電子データ保存として認められますか? A2. はい、認められる可能性がありますが、e-文書法及び国税関係帳簿書類の電子保存等に関する要件を全て満たす必要があります。これには、撮影した画像データにタイムスタンプを付与する、またはシステム上で改ざん防止措置を講じるなど、一定の技術的・管理的要件をクリアしなければなりません。簡易な写真撮影のみでは要件を満たさない場合が多いため注意が必要です。
Q3. 帳簿書類の保存期間は一律7年ですか? A3. いいえ、書類の種類によって異なります。例えば、欠損金の繰越控除に関する帳簿書類は、繰越期間が9年または10年あるため、それに応じた長期の保存が必要です。また、消費税の課税仕入れに関する帳簿書類も別途保存が必要です。詳細は国税庁のガイドラインで確認してください。
Q4. 過去の帳簿書類を廃棄したいのですが、良い方法はありますか? A4. 法定保存期間を経過した帳簿書類は廃棄可能ですが、税務以外の目的(会社法での計算書類の保存義務など)で保存が必要な場合もあります。廃棄する前に、税理士や法律の専門家に相談し、保存期間が完全に経過していることを確認することを強くお勧めします。廃棄時は、情報漏洩防止の観点からシュレッダー処理等、適切な方法をとってください。
Q5. 電子帳簿保存法における「真実性の確保」とは具体的に何をすればよいですか? A5. 主に以下のいずれかの措置が必要とされています。
- 訂正・削除を行った場合に、その事実及び内容を確認できる機能を有すること。
- 訂正・削除ができないシステムであること。 また、システムの開発仕様書や操作マニュアル等の関係書類を保存し、システムの信頼性を確保するための内部規程を整備・運用することも重要です。
6. リスクとコンプライアンス
- 保存義務違反: 帳簿書類の保存を怠ったり、虚偽の帳簿書類を作成・保存したりした場合、過少申告加算税や重加算税の対象となるだけでなく、法人税法第159条等により、青色申告の承認の取消や、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
- 電子データのリスク: システム障害やサイバー攻撃によるデータ消失・改ざんのリスクがあります。定期的なバックアップ、アクセス管理、セキュリティ対策の実施が必須です。
- 免責事項: 本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事案に関する確定的な判断を保証するものではありません。具体的な帳簿書類の取り扱いについては、必ず税理士等の専門家に相談の上、国税庁の公式発表や法令を参照して最終的にご判断ください。
7. 参考と出典
- 国税庁「帳簿書類等の保存制度」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5755.htm
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【法人税関係】」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/01.htm
- e-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律): https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000149
- 法人税法(第122条、第126条、第129条、第159条等): https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000034
8. 関連トピック
- 青色申告: 必要書類を適正に備え付けることは、青色申告の要件の一つです。
- 源泉徴収: 給与や報酬の支払い時に必要な源泉徴収票や支払調書の作成・保存。
- 消費税の帳簿保存: 課税仕入れに関する請求書等の保存は、消費税の仕入税額控除の要件です。
- 税務調査: 適切な帳簿書類の備え付けが、税務調査を円滑に進める鍵となります。