資金繰り表の作成

概要

資金繰り表は、企業の一定期間における現金・預金の収入と支出の流れを明らかにし、資金の過不足を把握するための財務資料です。資金繰り管理は企業経営の根幹を成す活動であり、資金繰り表の作成を通じて、短期・中長期の資金計画を立て、資金ショートを未然に防ぐことが可能になります。健全な財務体質の維持と事業の継続的な成長のために、定期的な資金繰り表の作成と分析は不可欠です。

適用対象・シナリオ

主な適用対象:

  • 中小企業・個人事業主
  • 起業家・創業予定者
  • 経営者および財務・経理担当者
  • 金融機関から融資を受ける、または受ける予定のある事業者

必要となる主なシナリオ:

  • 月次・四半期・年度の資金計画を策定・見直すとき
  • 新規設備投資や事業拡大に伴う資金需要を検討するとき
  • 金融機関に対して融資の申込みを行うとき(多くの場合、提出が求められます)
  • 経営状況の分析や将来のキャッシュフローを予測するとき
  • 資金不足が懸念され、対策を講じる必要があるとき

核心的な結論

  • 計画と実績の管理: 資金繰り表は、将来の予測(計画)と過去の実績を比較分析するツールとして機能し、計画と実績の差異から経営課題を早期に発見できます。
  • 資金不足の予測と対策: 将来の資金不足を事前に予測することで、早期に資金調達の手配(融資交渉等)や支出の見直しを行うことが可能になり、突発的な資金ショートを回避できます。
  • 金融機関との対話材料: 融資審査において、事業計画の信頼性と返済能力を客観的に示す重要な資料となります。精度の高い資金繰り表は、経営管理能力の高さをアピールします。
  • 経営判断の基礎資料: 投資判断や新規事業の採算性検討など、重要な経営判断を下す際の基礎的なデータを提供します。

手続き・操作手順

ステップ1: 準備

  1. 対象期間の決定: まず、資金繰り表を作成する期間(例:今後1年間、四半期毎)を決定します。短期(月次)と中長期(年次)の両方を作成することが理想的です。
  2. 必要な資料の収集:
    • 過去の銀行口座取引明細(実績分析用)
    • 売上予測・売掛金回収予定表
    • 仕入・経費の支払予定表
    • 借入金の元金返済・利息支払予定表
    • 固定資産の購入計画や税金(法人税、消費税等)の納付予定
    • 前期の貸借対照表、損益計算書
  3. フォーマットの選択: シンプルな「月次資金繰り表」が一般的です。主に「営業活動」「財務活動」「投資活動」によるキャッシュフローを区分して記載する方法もあります。テンプレートは公的機関のウェブサイトなどで提供されています。

ステップ2: 作成(計画の立案)

  1. 期首残高の記入: 対象期間の最初の月の、現金・預金の残高を記入します。
  2. 収入(キャッシュイン)の見積もり:
    • 営業収入: 現金売上、売掛金の回収、受取手形の入金予定額。
    • 営業外収入: 受取利息、雑収入など。
    • 財務収入: 借入金の実行予定額、増資による出資金の受け入れなど。
  3. 支出(キャッシュアウト)の見積もり:
    • 営業支出: 仕入代金の現金支払・買掛金の支払、給与・諸手当、水道光熱費、広告宣伝費、租税公課(源泉所得税、消費税等)など。
    • 営業外支出: 支払利息など。
    • 財務支出: 借入金の元金返済額。
    • 投資支出: 設備・車両などの固定資産購入資金。
  4. 資金過不足の計算: 各月ごとに「収入合計 - 支出合計」を計算し、資金の過不足を算出します。
  5. 月末残高の計算: 「月初残高 + 収入合計 - 支出合計」または「月初残高 ± 資金過不足」で月末残高を求め、それが翌月の月初残高になります。

ステップ3: 分析・見直し

  1. 実績との照合: 毎月、実際の収支を資金繰り表の計画値と照合し、差異を分析します。差異が生じた原因(売上未達、回収遅延、予定外支出など)を特定します。
  2. 計画の修正: 実績分析と経営環境の変化を踏まえ、必要に応じて将来の計画(予測)部分を修正します。特に資金不足が予測される月については、対策(収入増加策、支出見直し、資金調達の前倒し等)を検討・反映させます。
  3. 継続的な管理: 資金繰り表は一度作成して終わりではなく、定期的(少なくとも月に1回)に更新・分析を行うことで、その真価を発揮します。

よくある質問(FAQ)

Q1: 資金繰り表と損益計算書はどう違うのですか? A1: 損益計算書は「発生主義」に基づき、一定期間の経営成績(利益や損失)を表します。一方、資金繰り表は「現金主義」に基づき、実際の現金の受け取りと支払いのタイミングに焦点を当て、資金の流れを把握します。利益が出ていても、売掛金の回収が遅れれば資金不足に陥る可能性があるため、両方を併せて見ることが重要です。

Q2: 作成する頻度はどれくらいが適切ですか? A2: 経営管理ツールとして最も効果を発揮するのは「月次」での作成と分析です。月の初めに計画を作成し、月末に実績を記入・分析するサイクルが推奨されます。また、四半期や年度単位の中長期計画も併せて作成すると、より戦略的な資金計画が立てられます。

Q3: 資金不足が予測された場合、まず何をすべきですか? A3: まず、不足の原因と金額、時期を特定します。次に、(1) 売掛金の早期回収や在庫削減による「収入の増加・早期化」、(2) 経費の見直しや支払条件交渉による「支出の削減・延期」を検討します。それでも解消できない場合は、(3) 金融機関との融資相談など「新規資金調達」の準備を早期に開始する必要があります。

Q4: 金融機関に提出する資金繰り表で特に気をつける点は? A4: 根拠のない楽観的な数字ではなく、過去の実績に基づいた現実的な予測であることが最も重要です。売上予測の根拠(受注状況、市場動向等)や、大きな支出項目の内容を説明できるように準備しましょう。また、計画に対してどのようなリスクを想定し、対策を講じているかも評価の対象となります。

Q5: 無料で使えるテンプレートやツールはありますか? A5: はい。中小企業庁や日本政策金融公庫、信用保証協会などの公的機関のウェブサイトで、Excel形式のテンプレートが無料で提供されている場合があります。また、会計ソフトの多くには資金繰り表作成機能が標準で搭載されています。

リスクとコンプライアンス

  • 情報の正確性: 資金繰り表は経営判断の基礎となるため、入力する数値は可能な限り正確である必要があります。不正確な情報に基づく判断は、資金ショートなど重大な経営リスクを招く可能性があります。
  • 定期的な更新の重要性: 環境変化に応じて計画を更新しない資金繰り表は、単なる絵に描いた餅です。定期的な実績反映と計画の見直しを怠らないでください。
  • 専門家への相談: 資金繰りが著しく悪化している、または複雑な事業・取引を行っている場合は、税理士や公認会計士などの専門家に相談することを強くお勧めします。
  • 免責事項: 本記事で提供する情報は、一般的な資金繰り表作成に関する解説です。個別の事業内容や財務状況に応じた具体的なアドバイスを行うものではありません。重要な経営判断に際しては、必ずご自身で公式情報を確認の上、必要に応じて専門家の助言を得てください。

参考と出典

  • 中小企業庁「経営に役立つ財務サポート情報」
  • 日本政策金融公庫(日本公庫)
  • 国税庁「タックスアンサー」
  • 全国信用保証協会連合会
    • https://www.zenshinhoren.or.jp/
    • 融資・保証に関する情報とともに、経営支援の一環として資金繰り管理に関する資料を提供しています。

関連トピック

  • キャッシュフロー計算書: 上場企業などが作成する財務諸表の一つで、資金の流れを「営業活動」「投資活動」「財務活動」に区分して表示します。資金繰り表の考え方を発展させたものと言えます。
  • 損益計算書(P/L): 一定期間の収益と費用を記載し、利益(損失)の額を計算する財務諸表。
  • 貸借対照表(B/S): 一定時点における企業の財政状態(資産、負債、純資産)を表す財務諸表。
  • 事業計画書: 企業の経営方針や目標、それを達成するための具体的な戦略をまとめた文書。資金繰り表は、事業計画を数値(キャッシュフロー)で具体化した部分と言えます。
  • 運転資金: 企業が日常の事業活動を継続するために必要な資金。資金繰り表は、運転資金の適正額を把握し、その調達計画を立てる上で不可欠です。
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