飲食店営業許可(保健所)の取得について

1. 概要

飲食店営業許可(正式には「食品衛生法に基づく営業許可」)は、飲食店を開業・運営するために必須の行政許可です。食品衛生法第52条に基づき、食品の提供を伴う営業を行うすべての事業者は、施設の所在地を管轄する保健所から許可を受けなければなりません。この許可制度は、食中毒の防止や食品の安全確保を通じて、国民の健康を守ることを目的としています。飲食店を開業する上で、最も重要な法的要件の一つです。

2. 適用対象・シナリオ

この許可が必要なのは、不特定多数の顧客に食品を調理・提供して対価を得る営業を行うすべての事業者です。具体的には以下のような業態が該当します。

  • レストラン、食堂、カフェ、喫茶店
  • 居酒屋、バー、パブ
  • ファーストフード店、持ち帰り専門店
  • 仕出し屋、ケータリング業
  • そば・うどん店、ラーメン店
  • その他、食品を調理・提供するすべての営業

ただし、食品の「販売」のみを行う場合(例:包装済み食品の小売)や、特定の条件下での簡易な営業などは、「営業許可」ではなく「営業届出」で済む場合があります。詳細は管轄保健所に確認が必要です。

3. 核心的な結論

  • 事前許可必須: 店舗の内装工事着工前から保健所との事前相談が強く推奨られ、営業開始前には必ず許可を得なければなりません。無許可営業は罰則の対象です。
  • 施設基準の厳格な適合: 厨房の構造・設備(床材、壁材、換気、手洗い設備、調理器具の配置など)が食品衛生法及び各自治体の条例で定める基準に適合していることが許可の絶対条件です。
  • 人的要件の充足: 営業者は、食品衛生責任者を置くことが義務付けられています。食品衛生責任者になるためには、都道府県知事等が登録した講習会を受講する必要があります。
  • 継続的な遵守: 許可は一度取得すれば終わりではなく、施設の維持管理や従業員の衛生教育など、許可後の継続的な基準遵守が求められます。定期的な保健所の立ち入り検査があります。

4. 手続き・操作手順

ステップ1: 準備

  1. 事業計画の策定: 提供するメニュー、営業形態、想定客数などを明確にします。これが必要な設備規模を決める基礎となります。
  2. 店舗設計・事前相談: 店舗物件を確保したら、設計図面(平面図、厨房設備配置図、給排水経路図など)を作成し、管轄の保健所(店舗所在地を管轄する自治体の保健所)に事前相談を行います。この相談は極めて重要です。保健所の指導に従わずに工事を進めると、後で大幅な改造が必要になるリスクがあります。
  3. 食品衛生責任者の選任: 店主自身または従業員の中から、食品衛生責任者を選任します。未受講の場合は、管轄の保健所や食品衛生協会が実施する「食品衛生責任者養成講習会」を受講し、修了証を取得します。
  4. 必要書類の準備:
    • 営業許可申請書(保健所所定の用紙)
    • 施設の配置図、平面図、設備の大要図
    • 水質検査成績書(井戸水を使用する場合)
    • 食品衛生責任者資格証明書(養成講習会修了証の写し等)
    • 申請者の身分証明書(法人の場合は登記簿謄本)
    • その他、自治体によって要求される書類

ステップ2: 申請・提出

  1. 店舗の内装工事が完了し、厨房設備が設置された状態で、管轄保健所の窓口に申請書類を提出します。
  2. 申請時に必要な手数料を納付します。手数料の金額は営業の種類や自治体によって異なりますので、公式情報源で確認してください。

ステップ3: 審査・確認

  1. 施設検査: 申請後、保健所の担当職員が店舗に赴き、実地検査を行います。申請書類の内容と実際の施設が一致しているか、構造設備が法令基準に適合しているかを細かく確認します。
  2. 是正指導と修正: 検査で指摘事項があれば、是正する必要があります。是正後に再度検査を受ける場合もあります。
  3. 許可証の交付: 検査に合格すると、「飲食店営業許可証」が交付されます。この許可証は店舗内の見やすい場所に掲示することが義務付けられています。

5. よくある質問(FAQ)

Q1: 許可取得までにどれくらいの時間がかかりますか? A1: 事前相談から工事、申請、検査を経て許可交付まで、通常1〜3ヶ月程度を見込む必要があります。特に繁忙期や施設の複雑さによってはさらに時間がかかる場合があります。余裕を持った計画が不可欠です。

Q2: 既存の飲食店を譲り受ける場合、許可はどうなりますか? A2: 営業許可は施設と営業者に紐付いており、自動的に継承されるものではありません。新たな営業者として改めて許可申請を行う必要があります。その際、既存の設備が現在の基準に適合しているかどうかの検査が再度行われます。

Q3: メニューを大幅に変更した場合、許可の変更は必要ですか? A3: 営業の種類(例:喫茶店営業から飲食店営業への変更)や、施設の構造設備を変更する場合(例:厨房を増設する)は、許可の変更申請が必要です。単なる料理内容の追加・削除では変更不要な場合が多いですが、管轄保健所に確認してください。

Q4: インターネット販売(出前・デリバリー)のみの営業でも許可は必要ですか? A4: はい、必要です。顧客と直接対面しない場合でも、調理施設で食品を加工・提供する営業であれば「飲食店営業」に該当し、許可が必要です。施設基準は同じく適用されます。

Q5: 食品衛生責任者とは誰がなれますか? A5: 食品衛生責任者養成講習会を修了した人が資格を得ます。営業者(店主)自身や従業員が受講することが一般的です。栄養士、調理師、製菓衛生師などの有資格者は、申請により養成講習会が免除され、食品衛生責任者となることができます。

Q6: 許可後、定期的に更新は必要ですか? A6: 飲食店営業許可には有効期限が設けられておらず、一度取得すれば原則として更新手続きは不要です。ただし、営業を継続する限り、許可時の基準を維持し、保健所の定期・臨時の立ち入り検査に応じる義務があります。

6. リスクとコンプライアンス

  • 無許可営業のリスク: 無許可で営業した場合、食品衛生法違反として、営業の停止命令や、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下の罰金)に処される可能性があります。
  • 虚偽申請のリスク: 申請書類に虚偽の記載をした場合も罰則の対象となります。
  • コンプライアンス維持: 許可後も、従業員の健康管理(検便)、施設・設備の清掃と保守点検、食品の適切な温度管理、原材料の仕入れ記録の保管など、継続的な衛生管理が法律で要求されています。HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の導入も、事業規模に応じて義務付けられています。
  • 免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に関する法的助言を構成するものではありません。実際の申請手続きに当たっては、必ず管轄する保健所の最新の公式情報を確認し、必要に応じて専門家(行政書士等)の助言を受けてください。

7. 参考と出典

8. 関連トピック

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