資本金の払込証明の取得

1. 概要

資本金の払込証明は、株式会社や合同会社などの会社設立時に、定款で定めた資本金の金額が実際に出資者(株主または社員)から払い込まれたことを証明する書類です。日本の会社法では、会社の設立登記を行う前に、資本金の全額の払込みまたは給付が完了していることが要件とされています(会社法第34条、第579条)。この証明書類は、登記申請時に法務局へ提出する必要があり、会社設立手続きにおいて不可欠な要素です。資本金の払込証明を取得することは、会社の資本の確実性を担保し、債権者保護の観点からも重要な手続きです。

2. 適用対象・シナリオ

  • 新規に株式会社または合同会社を設立する発起人・設立時社員:会社設立登記の申請前に、資本金の払込みを完了させ、その証明を取得する必要があります。
  • 資本金を増加する場合の既存会社:資本金の増加決議に基づき新たな払込みが行われた場合、その事実を証明する書類が必要となることがあります。
  • 現物出資を行う場合:金銭以外の財産(現物)で出資する場合、その給付があったことを証明する書類が必要です。
  • 銀行口座を用いて出資する場合:最も一般的な方法であり、金融機関が発行する「預金通帳の写し」や「残高証明書」等が払込証明として利用されます。

3. 核心的な結論

  • 資本金の払込みは、会社設立の登記申請前に完了させなければなりません。
  • 払込証明は、出資者ごと払込みごとにその事実を客観的に確認できる書類でなければなりません。
  • 証明書類は、登記申請の際に法務局へ提出する設立登記申請書に添付します。
  • 資本金の額や出資方法(金銭出資/現物出資)によって、必要な証明書類の種類や詳細が異なります。
  • 資本金の払込みと証明の取得を怠ると、登記申請が却下されるため、会社設立が完了しません。

4. 手続き・操作手順

ステップ1: 準備

  1. 出資者と出資額の確定:定款に記載された発起人(株式会社)または設立時社員(合同会社)が、各自の出資額を確定します。
  2. 払込口座の開設
    • 会社名義の銀行口座は設立登記後でなければ開設できないため、通常は発起人または設立時社員の個人名義の口座を一時的な「払込取扱口座」として指定・利用します。
    • あるいは、銀行の「資本金払込証明取扱サービス」 を利用し、銀行が指定する専用口座に払い込みます。このサービスを利用すると、銀行が払込証明書を発行してくれます。
  3. 必要な書類の確認:どのような書類が払込証明として認められるか、事前に確認します(ステップ2参照)。

ステップ2: 申請・提出(払込みの実行と証明書類の取得)

  1. 資本金の払込み:定款に定めた全資本金を、準備した払込取扱口座に全額払い込みます。
  2. 払込証明書類の取得:払込みが完了した後、以下のいずれかの方法で証明書類を取得します。
    • 方法A: 金融機関の発行する書類による証明
      • 預金通帳の写し:払込取扱口座の通帳の表紙(口座名義人ページ)と払込みを記録したページのコピーを取得します。通帳のコピーには金融機関の証明印(日付入り)の押印が必要です。
      • 残高証明書:金融機関に依頼して、払込み後の口座残高を証明する書類を発行してもらいます。
      • 資本金払込証明書(銀行発行):銀行の専用サービスを利用した場合、銀行が発行する正式な「資本金払込証明書」を取得します。これが最も確実な方法です。
    • 方法B: 弁護士または公認会計士の証明による証明
      • 弁護士や公認会計士が、資本金の払込みが行われた事実を確認し、「資本金の払込みがあったことを証明する書面」を作成・押印します。
  3. 書類の整備:取得した証明書類に不備がないか確認します。特に、会社名、出資者名、払込金額、払込日が明確に記載されていることが重要です。

ステップ3: 審査・確認(登記申請時)

  1. 設立登記申請書への添付:取得した資本金の払込証明書類を、法務局へ提出する「株式会社設立登記申請書」または「合同会社設立登記申請書」に添付します。
  2. 法務局による審査:法務局の登記官が申請書類を審査し、資本金の払込みが適法かつ確実に行われたことを確認します。
  3. 審査結果:書類に不備がなければ登記が受理され、会社が成立します。不備がある場合は補正指示または却下となります。

5. よくある質問(FAQ)

Q1: 資本金はいつまでに払い込めばよいですか? A1: 会社の設立登記を申請するまでに、全額の払込みを完了させる必要があります。登記申請の準備段階で行うのが一般的です。

Q2: 複数人で出資する場合、証明書類はどうなりますか? A2: 出資者全員分の払込みを証明する必要があります。全員が同一口座に払い込んだ場合は一通の証明書類で足りますが、別々の口座を使用した場合は、それぞれの証明書類を準備する必要があります。

Q3: 通帳のコピーを証明書類として使う場合、何に気をつければよいですか? A3: (1) 通帳の表紙(口座名義人名がわかるページ)のコピーを取ること。(2) 払込み記録のあるページのコピーを取ること。(3) そのコピーに、金融機関の窓口で「これは原本に相違ない」旨の証明日付印(証明印)を押してもらうことが必須です。自分でコピーしただけでは証明書類として認められません。

Q4: 資本金の払込みに利用する口座は、誰の名義でも良いですか? A4: 会社設立前は会社名義の口座が作れないため、通常は発起人(代表発起人)や設立時社員の個人名義の口座を利用します。その場合、その口座名義人が払込証明書類に記載される出資者と一致していることを確認する必要があります。

Q5: 現物出資の場合はどのように証明しますか? A5: 金銭以外の財産(不動産、機械、特許権など)を出資する場合、その財産が会社に給付(引き渡し)されたことを証明する書類が必要です。例えば、不動産の場合は登記済証や引渡証明書、動産の場合は引渡目録などが考えられます。また、現物出資の価額が相当であることの検査手続き(裁判所の選任する検査役の調査など)が必要な場合もあります。

Q6: 資本金の最低額や、登録免許税の金額はいくらですか? A6: 資本金の最低額に関する規定は現在ありません(1円から設立可能)。登録免許税の金額については、資本金額に応じて計算されます。具体的な税率や計算方法は、最新の情報を法務省の公式ウェブサイトでご確認ください。

6. リスクとコンプライアンス

  • 虚偽の証明リスク:実際には払い込まれていない資本金について虚偽の証明書類を作成・提出することは、公正証書原本不実記載罪虚偽登記罪などの刑事罰の対象となる重大な違法行為です。
  • 証明書類の不備リスク:金融機関の証明印がない、金額や日付が不明確など、書類に不備があると登記申請が却下され、設立が遅延します。
  • 出資金の流用リスク:払込証明取得後、登記完了前に出資金を流用すると、資本金の払込みがなかったとみなされ、登記無効の原因となり得ます。会社設立登記が完了するまでは、当該口座の資金は使わないように厳重に管理する必要があります。
  • 免責事項:本記事は情報提供を目的としており、法的助言を提供するものではありません。会社設立や資本金払込みに関する具体的な手続きについては、専門家(司法書士、弁護士、税理士)に相談するか、必ず法務省管轄の法務局の公式情報を参照してください。

7. 参考と出典

8. 関連トピック

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