定款の作成と登記事項
1. 概要
定款は、株式会社や合同会社などの会社を設立する際に作成される最も基本的な規則であり、「会社の憲法」とも呼ばれます。会社の目的、組織、運営などに関する根本的な規則を定めた文書です。定款の作成は会社設立の第一歩であり、その内容は法務局への登記申請の基礎となります。定款の作成が不適切であると、登記申請が却下される可能性があるため、正確かつ法令に適合した内容で作成することが極めて重要です。
2. 適用対象・シナリオ
- 新たに会社を設立する個人または団体:株式会社、合同会社、合名会社、合資会社を設立する場合。
- 既存会社の定款変更を行う場合:資本金の増減、事業目的の変更、本店所在地の移転など、登記すべき事項に変更が生じた場合。
- 外国会社が日本に支店を設置する場合:外国会社の定款に相当する基本書類の認証等が必要となる場合があります。
3. 核心的な結論
- 定款は公証人の認証(株式会社の場合)を得ることが法律で義務付けられており、これがないと登記申請ができません(合同会社等は不要)。
- 定款に記載すべき絶対的記載事項(商法・会社法で定められた必須項目)を漏れなく記載する必要があります。
- 定款の内容は、会社の将来の運営やトラブル発生時の判断基準となるため、将来を見据えた慎重な作成が求められます。
- 電子定款(PDF形式)による認証も可能であり、紙の定款に貼る収入印紙代(金額は公式情報源で確認)が不要になるメリットがあります。
4. 手続き・操作手順
ステップ1: 準備
- 会社の基本事項を決定する:
- 会社の種類(株式会社、合同会社など)
- 商号(会社名)
- 本店所在地
- 事業目的
- 資本金の額
- 発起人(設立時株主)の氏名・住所
- 役員(取締役、監査役等)の氏名・住所
- 会計年度
- 定款の文案を作成する:
- 法務省の「定款雛形」を参考に、上記で決定した事項を盛り込んで文案を作成します。
- 定款の記載事項は、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」に分けられます。絶対的記載事項の漏れがないよう注意します。
ステップ2: 申請・提出(株式会社の場合の公証人認証)
- 公証人役場への事前連絡と予約:定款の認証を受ける公証人役場に連絡し、必要書類と日時を確認・予約します。
- 必要書類の準備:
- 作成した定款(3部:公証人用、登記申請用、会社保管用)
- 発起人(設立時株主)の印鑑証明書(発起人が法人の場合は登記簿謄本)
- 発起人の実印
- 手数料(公証人手数料と、紙の定款の場合は収入印紙代。金額は公式情報源で確認)
- 代理人が申請する場合は委任状
- 公証人役場での認証手続き:発起人またはその代理人が公証人役場を訪れ、公証人面前で定款に署名・押印し、認証を受けます。電子定款の場合はオンラインで手続きが完結します。
ステップ3: 審査・確認
- 認証済み定款の受け取り:公証人から認証済みの定款(登記申請用)を受け取ります。
- 登記申請書類の作成:認証済み定款を基に、法務局へ提出する会社設立登記申請書を作成します。
- 法務局への登記申請:登記申請書、認証済み定款、資本金の払込みを証明する書面、役員の就任承諾書・印鑑証明書等を管轄の法務局に提出します。
- 審査と登記完了:法務局による審査を経て問題がなければ、登記が完了し、登記簿謄本(登記事項証明書)が発行されます。これにより会社が正式に成立します。
5. よくある質問(FAQ)
Q1: 定款は自分で作成できますか? A1: 可能です。法務省の雛形を利用すれば、基本的な内容の定款を作成できます。しかし、特殊な事業目的や組織設計を予定している場合、将来の紛争を予防するためには、弁護士や司法書士などの専門家に相談・依頼することをお勧めします。
Q2: 株式会社と合同会社で定款の違いはありますか? A2: 記載すべき基本事項(商号、目的等)は共通ですが、株式会社の定款は公証人の認証が必須です。一方、合同会社の定款は、発起人全員の署名・押印があれば原則として認証は不要です。また、機関設計(役員の種類など)に関する規定の書き方が異なります。
Q3: 電子定款とは何ですか?そのメリットは? A3: 紙ではなくPDFなどの電子文書で作成し、公証人が電子署名により認証する定款です。最大のメリットは、紙の定款に貼る必要のある収入印紙代(金額は公式情報源で確認)がかからないことです。ただし、電子証明書の取得等、別途初期費用が発生する場合があります。
Q4: 定款の「事業目的」は後で変更できますか? A4: 可能です。ただし、株主総会(株式会社の場合)または社員総会(合同会社の場合)の特別決議が必要であり、変更後の定款について公証人の認証(株式会社の場合)を得た上で、法務局に変更登記を申請しなければなりません。
Q5: 定款に記載した資本金は、後で増やしたり減らしたりできますか? A5: 増資(資本金の増加)は比較的手続きが容易です。減資(資本金の減少)は債権者保護の手続きが厳格に定められており、手続きが複雑です。いずれも定款変更と登記申請が必要です。
6. リスクとコンプライアンス
- 記載不備のリスク:絶対的記載事項の漏れや、法令に反する内容が含まれていると、公証人による認証が受けられなかったり、法務局の登記審査で却下されたりするリスクがあります。
- 将来の紛争リスク:役員の権限、利益配分、意思決定方法などについて定款の規定が不明確だと、将来、株主や社員間で紛争が生じる原因となります。
- コンプライアンス違反:虚偽の内容を記載したり、実際の事業と著しく異なる目的を記載したりすることは、許認可取得上の問題や、場合によっては罰則の対象となる可能性があります。
- 免責事項:本記事は定款作成に関する一般的な情報の提供を目的としており、個別具体的な法律アドバイスを構成するものではありません。実際の手続きにあたっては、関連法令を参照し、必要に応じて専門家に相談してください。
7. 参考と出典
- 法務省「商業・法人登記」:登記制度全般についての解説。 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00006.html
- 日本公証人連合会:定款認証の手続き、公証人役場の検索。 https://www.koshonin.gr.jp/
- e-Gov法令検索「会社法」:定款に関する規定(会社法第26条~第31条等)。 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
- 法務省「定款の雛形」:株式会社及び合同会社の定款雛形(Word形式)。 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00122.html
8. 関連トピック
- 会社設立の全体フロー(法務省サイト内の関連ページ)
- 商業登記の申請手続き(※一般社団法人登記・供託オンライン申請協議会の例)
- 印紙税額一覧表(国税庁:定款の印紙税について)