公証人による定款認証
1. 概要
公証人による定款認証は、株式会社や合同会社などの会社設立時に、作成した定款(会社の根本規則)の内容が法令に適合していることを公証人が確認し、その成立を公的に証明する手続きです。この認証を受けることで、定款の成立日時が明確になり、また虚偽の記載を防ぐなどの効力が生じます。株式会社を設立する場合、原則としてこの定款認証が必須となります(合同会社など他の会社類型では不要です)。これは、会社の重要な基本規則である定款の信頼性を確保し、取引の安全を図ることを目的としています。
2. 適用対象・シナリオ
- 株式会社を設立する発起人:一人でも複数人でも、株式会社を設立する際には、発起人が作成した定款(発起設立の場合は「発起人定款」)について公証人の認証を受ける必要があります。
- 定款の内容を変更する場合(ごく一部の例外):通常、定款変更には公証人の認証は不要で、株主総会の特別決議により行われます。ただし、株式会社が発行する全部の株式の内容として譲渡制限を定める定款変更を行う場合は、公証人の認証が必要となります。
- 合同会社、合名会社、合資会社の設立時:これらの会社類型では、定款の認証は法律上要求されていません。
3. 核心的な結論
- 株式会社の設立には、原則として定款の公証人認証が法的に必要です。認証を受けないと設立登記ができません。
- 認証は、定款の内容が法令に違反していないかを公証人がチェックする重要な関門です。
- 認証を受けることで、定款に確定的な成立日時が付与され、法的な証拠力が高まります。
- 手続きには**所定の手数料(収入印紙代)**がかかり、定款に貼付する印紙の金額は資本金等に応じて異なります。
- 公証人は全国に配置されており、公証人役場で手続きを行います。事前の予約が一般的です。
4. 手続き・操作手順
ステップ1: 準備
- 定款の作成:会社の目的、商号、本店所在地、発行可能株式総数、発起人の氏名・住所など、法定の記載事項を盛り込んだ定款原案を作成します。紙の定款と電子定款のいずれかを選択できます。
- 必要書類の確認と準備:
- 発起人の本人確認書類:運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど(原本)。
- 発起人の印鑑:定款に押印する実印と印鑑証明書(発起人が法人の場合は、代表者印と印鑑証明書)。
- 手数料:定款認証手数料および定款に貼る収入印紙代(紙の定款の場合)。金額は公式情報源で確認してください。
- (代理人が申請する場合) 委任状と代理人の本人確認書類。
ステップ2: 申請・提出
- 公証人役場への連絡と予約:最寄りの公証人役場に連絡し、定款認証の予約を取ります。電子定款による認証を希望する場合は、その旨を伝え、対応可能か確認します。
- 公証人役場での手続き:
- 予約日時に、準備した書類と定款案(数部)を持参します。
- 公証人が発起人(または代理人)の本人確認を行います。
- 公証人が定款の内容を審査し、法令違反がないか、記載不備がないかを確認します。必要に応じて修正指示があります。
- 審査が完了したら、発起人(代理人)が定款に署名・押印します(電子定款の場合は電子署名)。
- 公証人が認証文を記入し、公証人役場の印鑑を押して認証を完了します。紙の定款の場合は、収入印紙を貼付し、消印を行います。
- 認証済み定款の正本と副本が発起人に交付されます。正本は登記申請時に法務局に提出します。
ステップ3: 審査・確認
- 公証人による審査は、主にその場で行われます。定款の形式や内容に明らかな法令違反(例えば、株式会社なのに社員の無限責任を定めるなど)があれば、認証は拒否されます。
- 認証が完了すると、認証済み定款が交付されます。この定款には公証人の認証文言が付され、確定的な成立日時が記載されています。
- 交付された定款の内容に誤りがないか、必ず確認してください。
5. よくある質問(FAQ)
Q1: 定款認証はどこで受けられますか? A1: 全国各地の公証人役場で受けられます。日本公証人連合会のウェブサイトで、所在地を検索できます。
Q2: 電子定款と紙の定款、どちらが良いですか? A2: 紙の定款には収入印紙代(数万円)がかかりますが、電子定款ではこの印紙代が非課税となり、費用を節約できます。ただし、電子定款を作成・署名するための環境(特定のソフトウェアや電子証明書)が必要です。
Q3: 定款認証の手数料はいくらですか? A3: 定款認証手数料(公証人への報酬)は法律で定められており、資本金等に応じて変わります。具体的な金額は、公証人役場に問い合わせるか、公式情報源で確認してください。
Q4: 認証に必要な時間はどれくらいですか? A4: 予約から認証完了まで、書類に不備がなければ通常は1〜2週間以内が目安です。役場での実際の認証作業は、30分〜1時間程度です。
Q5: 発起人が海外に住んでいる場合はどうすればいいですか? A5: 発起人本人が来日できない場合は、代理人(日本在住者)に委任状を渡して手続きを依頼する方法があります。委任状は、在外公館(大使館・領事館)で認証を受けるか、または公証人役場で相談する必要があります。
Q6: 定款の認証後、内容を間違えていたことに気づきました。どうすればいいですか? A6: 認証済みの定款は修正できません。内容を変更するには、会社設立登記後に「定款変更」の手続き(株主総会決議)を行う必要があります。重要な誤りがある場合は、公証人役場に相談し、認証前の段階に戻してやり直すことが可能か確認してください。
6. リスクとコンプライアンス
- 虚偽記載のリスク:定款に虚偽の記載をして認証を受けると、公証人法違反などの責任を問われる可能性があります。
- 法令違反のリスク:定款の内容が会社法などの法令に違反している場合、認証が受けられず、会社設立そのものが遅延または不能となります。
- 事前確認の重要性:特に特殊な事業目的や組織設計を考える場合は、公証人役場や司法書士などの専門家に事前に定款案を確認してもらうことを強くお勧めします。
- 免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に関する法的助言を構成するものではありません。実際の手続きに当たっては、必ず最新の法令を参照し、必要に応じて専門家に相談してください。
7. 参考と出典
- 日本公証人連合会:公証人制度の説明や公証人役場検索。 URL: https://www.koshonin.gr.jp/
- 法務省:公証人に関する情報 URL: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji37.html
- e-Gov法令検索:公証人法 URL: https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000053
- e-Gov法令検索:会社法(定款の認証に関する規定:第30条等) URL: https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086