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「高いか」ではなく「見合うか」 — 日本企業を買収するときの値付けの考え方

2026-07-15

日本の会社の買収を検討される方から、私たちは繰り返し「これは高いのですか」と問われます。しかし、出発点となる問いは別にあります。「高いか、安いか」ではなく、「その価格が中身に見合っているか」。前者は相手の言い値を疑うだけの問いですが、後者は自分で値付けの構造を持つ問いです。本稿は、その値付けの考え方を一般的な情報として整理します。

実務で広く用いられる「時価純資産+営業権」

中小企業の売買では、価格の組み立て方として「時価純資産に営業権を加える」考え方が実務で広く用いられています。中小企業庁が公表する「中小M&Aガイドライン」も、こうした実務を前提とした指針です。構成は二つの要素に分かれます。

  • 時価純資産 — 貸借対照表上の資産を時価で評価し直し、負債を差し引いたもの。いわば「今ある中身」の価値です。
  • 営業権(のれん) — その会社が将来生み出す収益力。実務では、過去数年の平均的な税引前利益に一定の倍率を掛けて概算することが多くあります。
構成要素見方概算の考え方(例示)
時価純資産今ある資産の実勢価値資産を時価評価し負債を控除
営業権将来の収益力平均的な税引前利益 × 数年分(倍率は案件により幅がある)
総額上記の合算純資産に営業権を加えた水準

倍率や年数は案件ごとに大きく異なり、一律の正解はありません。ここで重要なのは正確な数値そのものではなく、「相手の提示額を、自分の構造に当てはめて検証できる」状態を持つことです。

もう一つの帳簿 — 「支出」ではなく「投資」として見る

値付けと並んで大切なのが、二つ目の帳簿です。買収額を一度きりの支出として見るのか、回収期間のある投資として見るのか。安定した利益を生む事業であれば、買収額は年々の利益によって回収されていきます。この視点に立つと、「価格が高いか」という問いは「何年で回収でき、その後は何が残るか」という問いに置き換わります。

対照的に、実体を伴わない形式的な設立に資金を投じる場合、その資金は利益を生みません。一方は回収の見込める資産に、他方は回収の当てのない支出に向かう — この違いを、打診の前に構造として把握しておくことが要点です。

構造として捉える

私たちがお手伝いするのは、資金を動かす前に「見合うか」を構造として示すことです。確認すべきは次の三点です。

  • 提示額は、時価純資産と営業権に分解して説明がつくか
  • 営業権の前提となる収益力は、過去の実績に裏づけられているか
  • 買収額は、何年で回収できる投資として見えているか

「高いか安いか」を相手に委ねるのではなく、自分の手元に値付けの構造を持つこと。それが、日本企業の買収を検討する際の出発点です。


本稿は一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別の税務・M&Aに関する助言に該当するものではありません。具体的な評価・税額計算については、提携する有資格の専門家をご紹介の上、有資格者が対応いたします。

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