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日本を出ても相続税は追いかけてくる — 相続税の「10年ルール」という構造

2026-06-15

「日本を離れて帰国すれば、日本の相続税はもう関係ない」— こうした前提でご相談に来られる方は少なくありません。私たちはまず、その前提の確認から始めます。日本の相続税は、国内に住所がなくなった後も一定期間、全世界の財産を課税対象として捉え続ける構造を持っているからです。

課税範囲は「住所」と「国籍」で決まる

相続税の納税義務者の範囲は、相続税法第1条の3が定めています。財産を取得した人が相続開始の時に日本国内に住所を有するかどうか、そして国籍によって、課税が国内財産に限られるのか、全世界の財産に及ぶのかが分かれます。

ここで鍵になるのが「相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたか」という基準です。相続開始の時点で国内に住所がなくても、その前の10年以内に日本国内に住所を有していた場合、原則として全世界の財産が日本の相続税の対象となり得ます。「出国すれば終わり」という発想を覆すのが、この10年という期間です。

相続開始時の状況課税範囲(原則)
日本国内に住所がある取得した全世界の財産
国内に住所はないが、相続開始前10年以内に国内に住所があった原則として全世界の財産
在留資格による短期滞在者(一時居住者)等の例外に該当する一定の要件のもとで国内財産に限定される場合がある

注意すべきは、これが被相続人(亡くなる方)だけでなく相続人の側の状況にも関わる点です。財産を受け取る側の住所や国籍によっても課税範囲が変わるため、家族全体の所在を併せて見る必要があります。

例外となる「一時居住者」の正確な定義

全世界課税の例外として「一時居住者」という区分があります。相続税法第1条の3は、一時居住者を「相続開始の時において在留資格を有する者で、相続開始前15年以内に日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの」と定義しています。短期的に在留資格で滞在している外国人を念頭に置いた区分です。

一方、経営・管理の在留資格、永住者、帰化された方など、日本に長く生活基盤を置く立場の方は、この一時居住者の例外には当たりません。つまり、出国してもなお一定期間は全世界課税の枠組みの中にあるということです。なお、この「10年」という期間は、平成29年(2017年)の税制改正で従来の「5年」から延長されたものであり、出国による相続税対策のハードルはかつてより高くなっています。

「年度内に計画する」という発想

私たちの経験では、この10年ルールは「隠れた義務」というより「設計の前提」として捉えるべきものです。合法的に検討し得る方向は、おおむね二つに整理できます。

  • 出国後、一定期間にわたって日本に生活の本拠を戻さず、居住実態を整えること
  • 出国の前に、贈与や信託などを通じて資産の所在と承継の構造を整えておくこと

いずれも、出国直前に慌てて行えるものではありません。贈与等の制度には年度ごとの枠組みがあるものも多く、年度内に計画的に進める必要があります。出国の時期、在留資格、資産の移転を一枚の時間軸に並べて設計することが、この10年という期間に向き合う出発点になります。


本稿は一般的な税制情報の提供を目的とするものであり、個別の税務相談に該当するものではありません。具体的な申告・税額計算については、提携税理士をご紹介の上、有資格者が対応いたします。

<!-- GATE1-VERIFIED 2026-06-15 (japan_law.db): 相続税法第1条の3 一時居住者定義「在留資格+相続開始前15年以内に国内住所の合計10年以下」— 原文一致。源文「過去10年中5年以下」は誤りのため修正。10年ルール(相続開始前10年以内の国内住所)も同条で一致。 -->

<!-- GATE1-VERIFIED 2026-06-15 (税理士法人解説 gentosha-go.com/osd-souzoku.jp): 5年→10年延長は平成29年(2017年4月1日施行)税制改正。改正経緯: 平成12年・平成25年(各5年基準)→平成29年で10年に延長。 -->

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