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生命保険と相続税 — 「非課税枠」と「納税資金」という二つの機能

2026-06-23

「相続財産の大半が不動産で、相続税を納める現金がない」— 在日の資産家の方から、私たちはこの悩みを繰り返し聞いてきました。相続税は原則として現金での一括納付であり、財産が不動産に偏っていると、相続人は納税のために不動産を急いで売却するか、借入をするかの選択を迫られます。生命保険は、この問題に対して二つの異なる機能を果たします。

生命保険が持つ三つの機能

機能仕組み効果
① 非課税枠500万円 × 法定相続人の数相続人3人なら1,500万円が非課税
② 納税資金の確保死亡後、短期間で現金が支払われる不動産を急いで売却せずに済む
③ 法人保険の活用法人が受取人となり遺族へ死亡退職金を支給死亡退職金にも非課税枠がある

第一の機能 — 非課税枠

相続人が受け取る生命保険金には、相続税法第12条第1項第6号により、「500万円 × 法定相続人の数」までの非課税枠が設けられています。法定相続人が3人であれば1,500万円までが相続税の課税価格に算入されません。同じ1,500万円を預金で遺せば全額が課税対象になりますが、保険金として遺せば非課税枠の分だけ課税対象から外れます。

同様の非課税枠は、退職手当金等についても相続税法第12条第1項第7号に定められています(同じく500万円 × 法定相続人の数)。

第二の機能 — 納税資金の確保

相続税の申告と納付は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません(相続税法第27条)。この期限は、財産の大半が換金しにくい不動産であっても変わりません。

生命保険金は現金で、かつ受取人固有の財産として、比較的短期間で支払われます。相続税法第3条第1項第1号は、被相続人の死亡により取得する生命保険金を相続により取得したものと「みなす」と定めており、課税の対象とはなりますが、その現金性が納税資金として機能します。不動産の比率が高い相続ほど、保険による納税資金の準備が現実的な意味を持ちます。

第三の機能 — 法人保険

法人を契約者・受取人、経営者を被保険者とする保険では、経営者の死亡時に法人が保険金を受け取り、これを原資として遺族に死亡退職金を支給することができます。死亡退職金にも前述の非課税枠(相続税法第12条第1項第7号)が適用されます。なお、法人が支払う保険料の損金算入の取扱いは、保険の種類や返戻率に応じて国税庁の通達で細かく定められており、実際の処理は個別の契約内容に即した確認が必要です。

設計上の留意点

受取人の指定。 保険金は受取人固有の財産として遺産分割を経ずに支払われます。誰を指定するかがそのまま結果になりますが、他の相続人との関係では遺留分への配慮が必要になる場合があります。

保険料贈与という構造。 親が保険料を負担し子が保険金を受け取る形では、保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象となります。相続税の税率は累進的で、最高税率は55%に及びます。

これに対し、契約者と受取人をいずれも子とする構造があります。親が暦年贈与の基礎控除(年間110万円)の範囲内で子に資金を移し、子がその資金で自らを契約者・受取人、親を被保険者とする保険に加入する形です。この場合、保険金は親の死亡で支払われても相続財産とはみなされず、子の一時所得として課税されます。

一時所得は、総収入金額から支出した金額を差し引き、さらに特別控除50万円を控除して計算されます(所得税法第34条)。そのうえで、その金額の2分の1のみが総所得金額に算入されます(所得税法第22条第2項第2号)。たとえば払込保険料の総額が2,200万円、保険金が5,000万円であれば、課税対象は(5,000万 − 2,200万 − 50万)÷ 2 = 1,375万円となります。同じ5,000万円が相続財産として全額課税される場合と比べ、課税の構造が大きく異なります。

ただし、この構造が有効に機能するかは、贈与の実態、保険料の負担関係、契約者・受取人・被保険者の組み合わせなど、個別の事情に左右されます。形式だけを整えても意図した取扱いとならない場合があるため、設計は慎重な検討を要します。

構造として捉える

生命保険は、相続対策において「非課税枠」と「納税資金」という二つの異なる役割を担う数少ない手段です。年齢が上がるほど保険料は高くなり、既往症があれば加入が難しくなります。だからこそ、相続財産に占める不動産の比率、法定相続人の数、想定される相続税額を一枚の図に整理したうえで、保険をどう位置づけるかを検討することが出発点になります。


本稿は一般的な税制情報の提供を目的とするものであり、個別の税務相談に該当するものではありません。具体的な申告・税額計算については、提携税理士をご紹介の上、有資格者が対応いたします。

<!-- GATE1-FLAG: 法人保険の保険料損金算入ルール(解約返戻率に応じた区分、2019年改正の「50%以下=全額損金」等)的出典为国税庁通達,非法令条文,本法令DB无法逐条核验。故未记入具体的损金算入割合数值,仅作一般化的构造说明 -->

<!-- GATE1-FLAG: 最高税率55%(相続税法第16条でDB核验済み・六億円超=55%)及び暦年贈与基礎控除110万円(租税特別措置法第70条の2の4でDB核验済み「課税価格から百十万円を控除する」)は、いずれも事実としては源文に記載があるが条文番号は源文に無かったため、Rule6(源文に無い法条を補充しない)に従い条文番号の付記を削除し、事実のみ一般的表現として記載 -->

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