SEISEI INSIGHTS — 国際税務コンプライアンス

中国からの配当をどう扱うか — 在日華人経営者と「二重課税」の構造

2026-06-27

私たちが在日華人の経営者から繰り返し受ける相談の一つに、「中国の会社から配当を受け取った。この収入は日本でも申告が必要なのか」というものがあります。母国の会社から出た利益であり、すでに中国側で税が引かれている。それでも日本で課税されるのか — 答えは、多くの場合「必要」です。問題は隠す・隠さないではなく、自分がどの課税範囲に立っているかを正しく把握することにあります。

永住者は全世界の所得が課税対象

出発点は自分の居住者区分です。所得税法第7条第1項第1号は、非永住者以外の居住者(いわゆる永住者)に対し「全ての所得」への課税を定めています。過去10年以内の国内居住期間が合計5年を超えれば、非永住者の区分から外れます(所得税法第2条第1項第4号)。長く日本で生活し事業を営む方の多くは、すでに全世界所得課税の対象です。中国法人からの配当も、原則として日本の課税対象に含まれます。

配当は二つの国を順に通る

国境を越える配当は、二つの国の税制を順に通過します。

段階何が起きるか関連する仕組み
源泉地国(中国)配当の支払時に源泉徴収。租税条約により税率に上限が設けられる日中租税条約
居住地国(日本)全世界所得として確定申告し、累進税率で課税所得税法第120条・第89条
二重課税の調整外国で納めた税を一定の限度まで控除外国税額控除(所得税法第95条)

源泉地国である中国では、配当の支払時に源泉徴収が行われます。日中租税条約は源泉地国が課しうる税率に上限を設けており、適正な手続を踏むことで条約上の軽減を受けられる場合があります。具体的な税率・適用要件は条約本文および各国の手続規定によります。

居住地国である日本では、その配当を含む全世界所得を確定申告します(所得税法第120条)。日本の所得税は超過累進で、課税所得のうち4,000万円を超える部分には45%の税率が適用されます(所得税法第89条)。これに住民税が加わります。

外国税額控除という調整装置

同じ所得に中国と日本の双方で課税されれば二重課税になりますが、これを調整するのが外国税額控除です(所得税法第95条)。中国で納めた外国所得税は、その年分の所得税額のうち国外所得に対応する部分(控除限度額)を限度として、日本の所得税額から控除できます。控除しきれなかった額については、一定期間繰り越せる場合があります。

ただし重要な前提があります。控除は、確定申告で国外所得を正しく記載し、納税を証する書類を備えて初めて適用されます。申告そのものを怠れば、控除の機会を失うだけでなく、両国の課税当局から同時に追及される可能性を負うことになります。

構造の問題として捉える

確認すべきは次の三点です。

  • 自分は永住者か非永住者か — 課税範囲が根本から変わります
  • 源泉地国で課された税はいくらか — 控除の基礎になります
  • 確定申告で国外所得と納税の事実を示せるか — 控除適用の前提です

配当・利息・使用料といった国境を越える所得は、「源泉地国の課税」「居住地国の課税」「二重課税の調整」という三つの層を一枚の構造図に起こすことから、整理が始まります。


本稿は一般的な税制情報の提供を目的とするものであり、個別の税務相談に該当するものではありません。具体的な申告・税額計算については、提携税理士をご紹介の上、有資格者が対応いたします。

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